三河万歳の演目

安城の三河万歳は大きく3つの演目に分けられます。

《1》太夫と才蔵の2人で演じる「神道三河万歳」
《2》扇を手にした太夫は中央に、鼓を持った才蔵は左右に2〜3人ずつ並び、舞台で演じることを意識して演じられた「三河御殿万歳」
《3》歌舞伎の名場面を題材にした滑稽な演技に、鼓と三味線と胡弓の3つの楽器の演奏を加え人々を楽しませた「三曲万歳」

ここではそれぞれの動画とともに、三河万歳の演目をご紹介します。



神道三河万歳

神道三河万歳には、「三羽鶴の舞」「七草の舞」「天の岩戸開きの舞」の3種があります。鶴、亀、海老、鯛、繁盛、豊年など、めでたい詞をつらね、身振り手振りをまじえておもしろおかしく舞いますが、その芸風が古風だとして注目されています。太夫と才蔵の2人で演じる別所の三河万歳が伝えてきた演目です。

年毎に栄えゆくよう寿(ことほ)ぎて今朝新玉の春を迎えん誠に芽出度う候ふ… で始まる「三羽鶴の舞(さんばづるのまい)」、伊勢海老、蛸に保命酒、土佐の酒が出てきたと思えば、あーら七草なずな、とうたう「七草の舞(ななくさのまい)」、 そして天の岩戸に隠れた天照大神を呼び戻す場面を織り込んだ「天の岩戸開きの舞(あまのいわとひらきのまい)」。古事記でおなじみの場面を、太夫と才蔵が愉快に掛け合います。

  『三羽鶴の舞』 『天の岩戸開きの舞』

三河御殿万歳

新春に鶴と亀が訪れて、家を立てる柱に神々を呼びこみ、そこへ七福神がきてにぎやかに祝うことが歌われます。太夫は扇を手にして中央に、才蔵は鼓を持って左右に2〜3人ずつ並び、ともに笑顔で演じます。

めでたいことばやかけことばをいくつも使い、語呂よくうたいます。 前半は太夫は床机(しょうぎ)に腰掛け、才蔵は座ったまま進みますが、後半になると立って舞いながらうたいます。

内容は、新春に鶴と亀が訪れる「地」、次々に神々の名をよみあげる「柱立」、さらに七福神(恵比寿、大黒、福禄寿、布袋、寿老人、弁財天、毘沙門)が順番に出てきて賑やかに祝う「舞い」の3つに分かれます。特に「舞い」の部分のうたは、なんともおかしく滑稽です。二人で舞う神道三河万歳に対し、この御殿万歳は舞台で演じることを意識したもので、発展形の万歳とも言えます。

  『三河御殿万歳』

三曲万歳

歌舞伎の名場面を題材に、滑稽な言葉やしぐさで演じます。鼓に三味線と胡弓を加え、3つの楽器を使うので三曲万歳といいます。芝居万歳とも呼ばれ、たいへんもてはやされました。

・忠臣蔵三段目「裏門の場」
江戸時代に流行した「仮名手本忠臣蔵」の一場面をパロディー的に演じます。 塩冶判官が殿中で己を侮辱した高師直を切りつけた咎により、塩冶家は閉門になります。恋人お軽との逢瀬を楽しんでいてお家の大事にかけつけられなかった早野堪平は、切腹して詫びようとしたところお軽にとめられ、お軽の実家へと向かうことになります。そこへ主の敵・高師直の家来の鷺坂伴内が追ってきて堪平と立ち回りを演じる、というものです。 衣裳や化粧もなかなか本格的です。お楽しみください。

  『忠臣蔵三段目 裏門の場』